2017年4月17日月曜日

スペイン紀行② 旅(トラベル)の語源はトラブル

 
 
 
それは『悪魔の橋』から始まった。
 
スペイン旅行3日目。
その日は午前中、バルセロナで自由時間を過ごし、
午後は世界遺産、タラゴナの水道橋を経て、マッサルファサールへと
350㎞もバスで移動する日であった。
 
その日から私達のバスは横3列シートのVIPバスになり、
長距離移動も革張りのリクライニングシートで悠々と過ごすはずだった。
 
午前中、私と友人はピカソ美術館とカサ・ミラやカサ・バトリョなどを見学し、
早速、ミュージアムショップで気に入ったお土産を手に、
午後1時半、バスに乗み、バルセロナを後にした。
 
スペインは予想以上に上天気で、朝晩は10℃を下回るのに、
日中は30℃越えになるほど、1日の寒暖差が激しい。
なのに、
2日目のバスはエアコンが全く効かず、具合の悪くなる人が出る始末だったが、
3日目からは別のバスになったので、
これで快適なバスの旅が楽しめると思った・・・。
 
バルセロナを出発し、100㎞ほど走ったところで、
2000年前に造られたというタラゴナの水道橋に到着。
 
2000年前に造られたなんてとても信じられない立派な橋なので、
「きっと悪魔が手伝ったにちがいない」ということで、『悪魔の橋』と呼ばれている。
 
私達は駐車場から橋まで散策し、固まった手足を伸ばし、
気持ちのよい風を肌に感じ、何枚か写真に収めてバスに戻ってきた。
 
すると添乗員さんが血相を変え怖い顔でこう切り出した。
 
「皆さん、緊急事態発生です。
バスの運転手さんがギックリ腰になって、全く動けないといっています。
今、救急車を呼んだところです。
私達はこれからまだ260㎞も先のマッサルファサールまで行かなければならない
のですが、高速道路の真ん中にいて代わりの運転手さんが見つからない状態です。
何とかしますので、しばらくお待ちください」
 
「何とかするって、どうするんだろう」
みんなの顔に不安の色が浮かんだ。
 
添乗員さんが必死に誰かとケータイでやりとりしている。
ほどなくして、本当に救急車がやってきた。
スペインの救急車は鮮やかな黄色い車体だ。
 
救急車の記念撮影をしていると、添乗員さんからまた、連絡が来た。
「後ろに走っていたLOOK JTBのバスに乗せていただけることになったので、
30分ほどいったところのサービスエリアに移動していただきます。
この駐車場は何もありませんが、
そこなら、トイレもちょっとした食べものもありますので、
そこで打開策が決まるまで待っていただくことになりました。
ほんとうにごめんなさい」
 
ということで、ほぼ同じ旅程で走っていた後続のJTBのバスに25人は乗せてもらい、
少し先のサービスエリアで降ろしてもらった。
 
JTBのバスは横4列シートのバスに15名ほどのお客さんだったので、
私達25名も乗り込めたのだが、地獄に仏とはこのことか。
もし、逆の立場だったら、私達のバスに15名を乗せる余力はない。
 
添乗員さんだけを水道橋の駐車場にひとり残し、私達はトイレのある休憩所で
いつ来るとは知れない代車のバスを待つことになった。
時すでに夕方の5時。
 
スペインの4月は7時半に夜が明け、夜8時半を過ぎて日が暮れる。
夕方5時では、外はまだ明るいのだが、気持ちは暗い。
 
結局、私達はその場で4時間待って、夜9時、
マドリッドから別のバスが到着し、もちろん別の運転手さんの運転で
260㎞先のマッサルファサールへと向かった。
 
マッサルファサールのホテルに着いたのは辛くも日付が変わる少し前の11時半。
ホテルで用意してくれた食事を、皆、静かに口に運び、
長い長い「待ち」の1日は、日にちをまたいでようやく終わった。
 
今回の旅行、何を隠そう、行きの飛行機にも遅延があって、
乗り継ぎの飛行機が3時間遅れ。
(スペインはほとんどが乗り継ぎ便になる)
 
現地時間の夜9時にバルセロナ着の予定が、
夜中の1時に空港に到着した。
そこからホテルまで30分。
 
スペインは夜中の1時半だが、時差が7時間あるので、
日本は既に次の日の8時半。
つまり、徹夜で起きて、飛行機を乗り継いで来たことになる。
 
つつがなく観光を遂行するために、起床時間は予定通りの7時だったから、
旅の一行は初日から寝不足だ。
 
なぜか毎日毎日交通関係にトラブルが続く。
 
「トラブルが起きるのがトラベルだ」
そう開き直られちゃ、返す言葉がないが、
添乗員さんも長い添乗員生活でここまでシリアスなトラブルに遭ったのは
初めてとか。
 
その添乗員さんの機転と行動力と決断力と語学力には恐れ入るが、
バス会社には
ぜひ一度、交通安全のお祓いをお願いしたいと心から思った。
 

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