2016年12月4日日曜日

冬の陶芸工房

 
 
 
冬場の陶芸工房では、工房の真ん中に大きなストーブが焚かれている。
 
灯油で焚いていると思われるが、
着火と消火の時には、ボンッと軽い爆発音がするし、
点けて1時間もすると30畳ぐらいある工房が蒸し暑くなるぐらいの火力がある。
 
この大きなストーブを囲んで、皆、寡黙に作陶作業に取り組んでいると、
「あ~、今年も暮れだな」と思う。
 
今年から工房主宰者の先生が、一般の人を対象に
「陶芸体験教室」を開いて以来、
毎週末には初めて陶芸をしましたみたいなお客さんがやってきて、
楽しそうにろくろで湯呑みやお茶碗なんかを作っている。
 
私は基本、月2回、土曜日の午後に工房に行っているので、
大抵、先生は体験希望の人にかかりきりで、説明したり手助けしたりしている。
 
元々、この工房は自由作陶の工房だから、
先生に習うという形式ではなく、
私達は生徒ではなく、会員という形で、
会費を納めて工房を使わせてもらうということになっている。
 
だから、初めてろくろを経験しているお客さんの素朴な疑問や
初めての人向けの懇切丁寧で分かりやすい説明を何度となく小耳にはさみながら、
会員はひとり自分の作品を制作している。
 
今回は私は板作りといって、土を5ミリ厚さに麺棒で伸ばし、
十二角形の型紙で切り取ったたものを、型にかぶせて、
大きめのサラダボールとお皿を作ることにした。
 
直径30㎝ぐらいある真っ平らに引き延ばした土を
木のサラダボール状のものにかぶせてなじませるには
傾斜がついているのでヒラヒラと余った土を殺しながら型に沿わせなければならない。
 
ひとり、静かにその作業をしながら、土を対話するような気持ちが大切だ。
 
ストーブの火が燃える音と陶芸体験のお客さんの声と先生の説明をBGMに、
私の目の前にサラダボールとお皿が出来上がった。
 
十二角形を切り落とした残りの土をまとめ直し、
2客、湯呑みも作って、手元の土を全部使い切り、一呼吸している時だった。
 
体験教室に参加していた若い女性が、ろくろでひとつ茶碗を作り終えた後、
残りの土を平たく伸ばし八角形の型で抜いて、キッチンで使うボールに伏せ、
小さな小鉢を作るよう先生に促されている。
 
「えーっ、伏せるって、粘土余っているところ、どうすればいいんですか」
「そのままボールの形になじむように、そっと上から抑えてみて」
「えーっ、無理です無理です、余ってますもん・・・。しわになっちゃう・・・」
「大丈夫だから、静かにそ~っとそ~っと」
「あら~、ホントだ。小鉢っぽくなってる、すご~い。どお?!」と、大騒ぎ。
 
ふたり組はお互いの作品を褒めあったり、写メを撮ったり、
「想像していたより大変だったけどおもしろかった」などと感想を言って、楽しそうだ。
 
もはや私にとっての陶芸はそんな未体験の楽しいものではなくなったし、
けっこうな大物にも挑戦できるようになっている。
 
というか、工房では「大物狙いのハギワラさん」で通っている。
 
それでも、まだ、思い通りの器が焼き上がってくることはなかなかないし、
時には素焼きでヒビが入ってしまったり、
釉薬がうまくかからなかったりする。
 
陶芸を初めて、そろそろ5年。
 
初めての体験に大騒ぎで大喜びな時期はとっくに過ぎたので、
そろそろどこに向かって、何を目指して作陶するのかしないのか、
考えなくちゃなぁと感じる暮れの陶芸工房である。

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