2015年10月8日木曜日

『版画展』 始まる

 
6日から東京上野の都美術館で、日本版画協会の展覧会が始まった。
名前を『版画展』という。
 
他にも版画だけを扱う団体展はいくつかあるのに『版画展』というのは、
ちょっと傲慢な気もするが、
それだけ歴史があり、版画展といえば『版画展』なんだという自負の表れか。
 
大学の4年の時に初めて応募して初入選を果たし、
以来、海外に住んでいるときも、子どもを産んだときも、
休みなく出品し続けたので、かれこれ35回ぐらいは参加したことになる。
 
最初の年は入選しただけで嬉しかったし、
幸い3回目の入選で準会員にしていただいた時も、
海外転勤が決まった年だったのでとても助かったし、
これで海外にいても版画が続けられると思った。
 
しかし、それから鳴かず飛ばずのウン十年があり、
その間に苗字を変えて出品するようになったため、まるで幽霊部員。
長い長い塩漬け状態の日々が始まった。
 
そして、10数年前、ようやく正会員に昇格させてもらったのだが、
なぜか、会員になれた後の数年は嬉しくて展覧会にも何度も足を運んだが、
最近はめっきり。
 
会期が20日あまりあるというのに、1回かせいぜい2回しか
上野まで行かなくなってしまった。
 
今年も同じ6日に趣味の陶芸の方で作陶展が始まり、
搬入とセッティングで招集がかかっていたので、
版画展そっちのけで作陶展会場にいた。
 
版画展の搬入・搬出は業者任せだし、
飾り付けも飾り付けの係がやってくれるので、一般会員の出番はない。
 
だから、まるでお客さんと同じ気持ちで、
今日、初めて、
自分の作品がどこに掛けられているのか確かめにいったようなものだ。
 
何百点とある版画作品はひとつひとつ観るには膨大なので、
今年の審査で好成績を収めた作品群と、友人知人の作品と、
自分の好きな作品を主に観て、
最後に事務局に寄って、今年の画集カタログを受け取った。
 
我が学舎のあった上野のお山もかなり様変わりしているし、
版画展にも若い人がどんどん入ってきているので、
いつのまにか距離ができているのを、しみじみ感じてしまった。
 
同じ都美術館で行われている『モネ展』は今日は30分待ちだとかで、
チケット売場にも会場入り口にも長蛇の列が出来ていた。
 
そのすぐ隣の会場なのに、スカスカの『版画展』会場を歩き回りながら、
これだけ大勢の作家達は、何を考え、誰のために、何を表現したくて
作品を制作・発表しているのだろうと思った。
 
版画は自己表現なんだけど、内輪の人間だけが観ているだけでいいのかな?
団体展に出すメリットがだんだん薄れているかも。
自分にとって団体展とは何?
 
ひとり会場を回ってから、事務局で重たい画集を受け取り、
モネ展に並ぶ人垣をかいくぐって外に出た。
 
外は秋の日差しが柔らかく、風が少し冷たくて心地よい。
 
何十年も続けてきた団体展への出品という当たり前の行事が
もしかしたら当たり前じゃないかもということに気づいた午後だった。
 
こんな風に時は移ろい、
人の気持ちも変化する。
 
さて、そうこうする内に2015年もあと2ヶ月半。
毎年、月日の経つのは早い早いといいながら、すぐまた年末になるだろうが、
ただ、考えもなく流されずに、日々を丁寧に生きていきたい。
 
だって、人生はエンドレスじゃないから。
 
 


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