2015年9月30日水曜日

摂食障害の講座を受講して

 
最寄り駅のオフィスビルで時折『心を学ぶ講座』が行われている。
ここ数年で、興味のある内容の分を20回以上、受講してきた。
 
今回は『摂食障害』について、2回続きで、
長谷川病院の院長・吉永陽子さんの講義だった。
 
摂食障害とは拒食症だったり、過食症だったり、
過食嘔吐だったりあたりがよく知られている。
 
長谷川病院はとりわけ重篤な患者さんを入院治療している精神病院なので、
そこの院長として、どのような症状の患者さんが見え、
どんな治療をしているのか、症例を示しながら講義がすすめられていく。
 
精神病院の院長先生ときくと、どんな人を想像するか
人それぞれとは思うが、
吉永先生ほどその先入観をくつがえしてくれる先生もいないのでは・・・。
 
私の中では精神科医とはちょっと神経質で、ちょっと怖くて、難しい人、
でも、患者の話には親身になって耳を傾けてくれると、そんなイメージだった。
 
ところが、目の前のその人は
先ず、あまり医者っぽくない、近所の気さくでおせっかいなおばさんみたい。
 
いつも派手で明るい色の面白いデザインのセーターなど羽織り、
真っ赤な口紅、かわいいバレッタやリボン、いくつもの指輪なんかを
身につけている。
 
丸顔にくるくるよく動く丸い目、にこにこ笑顔でころころ笑い、
早口で病院に入院している重篤な拒食症の患者さんの症例などを、
おもしろ可笑しくつらつらと話す。
 
彼女の目の前にいる患者さんは
成人女性なのに体重が30キロを切っているような
一瞬言葉を失うような状況なんだと思うが、
どこか慣れているというのとも違うが、泰然自若として、
「駄目なものは駄目」「それはよくあるパターン」「その手は桑名の焼きハマグリ」
みたいな感じで、サバサバとものごとを片付けていく(のだろう)。
 
また、野球がとにかく大好きで、
講義の最後にはいきなり休日に贔屓の球団を応援に行った話や
母校の野球部が2年連続で甲子園に出たので、応援に行った話などをぶち込んで
有無を言わさず、スライドを見せたり、選手について熱く語ったりする。
 
私としては、摂食障害とはなんぞやということや、
パーソナル障害の人の特徴と摂食障害との関係みたいな本題も
さることながら、
その先生の濃くてユニークなキャラクターの方に目がいってしまう。
 
この『心を学ぶ講座』には各方面からいろいろな先生が講師としてくるけど、
1番印象深い先生かもしれない。
 
たぶん長谷川病院という大規模な精神病院の院長を務めているからには
相当の実績と実力を兼ね備えたドクターのはずだけど、
話の内容とビジュアルや言葉づかいの軽さがマッチしないので、
まるで寄席で漫談でもきいているような気分なのだ。
 
それでも拒食症や食べ吐きの人の心理、
パーソナル障害の人がどういう経緯で摂食障害になるのかなど、
ためになる話もたくさん聴けたので、
心理カウンセリングのクライアントさんの症例として、
もし、こういうことがあったらと、心理カウンセラーの端くれとしてとても勉強になった。
 
5~6年前、私が心理カウンセリングの勉強をしていた頃、
同じ机を並べていた人に、
こうした食べ吐きや、リストカットなどの自傷行為を辞められない人がいた。
 
その人が告白した幼少期の親からの虐待と、若き日に受けた性暴力という
辛い過去から立ち直れない苦しさの吐露が思い出される。
 
たぶん長谷川病院には、そうした事例が枚挙にいとまがないほどだろう。
それを受け止め、受け入れ、こちらが壊れず平常心で対応するには
あのおおらかさと肝っ玉と、どこか外したような脳天気さがないと
やっていけないのかもしれない。
 
救助職に就いている人のうつの罹患率は相当高いというデータからみても、
これは精神科医を選んだ彼女の処世術なのかも。
 
人間ウオッチングとしても大いに楽しめた2回の講座であった。
 心理カウンセラーの心得として、心に留めておこうと思う。

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