2014年12月4日木曜日

勝手きままな版画家生活

 
 
 
 
 
雨の降る中、月曜日の朝、ダンナと大量の荷物を成田に送りだした。
ひとり空っぽになった車を運転して自宅帰ると、
さあ、ここからがいよいよひとり暮らしの本番だ。
 
先週は最後の荷物くくりのため、家中に衣類やら靴やら書類やらを撒き散らし
いったいこの家はどうなるのやらとジレジレして過ごしていたのだが、
ようやくその散らかし魔がマレーシアにいってくれたので、
この小さな城は我が手に収まった。
 
まだまだ散らかした残骸やら、頼まれものの書類など、
気にしだしたら相当量あるのだが、そこは片目をつぶって
いよいよ版画の摺りに取りかかることにした。
 
2点連作の新作『人を想う』と『孤を愉しむ』(仮題)
 
まず、月曜日の午後、早速、桜が水辺に漂う方から試し摺りに着手。
 
1ヶ月ほど前、いったん試し摺りをとったところ、彫り自体が気に入らず
2点とも大幅な彫り直しを敢行したので、
今回こそはと期するところ大。
 
続いて、同じ日に紅葉が舞い散る方も試し摺りをとった。
感触としてはこちらの方が雅な感じでいい作品になりそうな予感。
 
火曜日にどちらかから本摺りをする心づもりで、
まずは2作品分の和紙12枚をカットし、
内6枚を本摺りに向け水刷毛で湿らせ重しをして準備完了。
 
試し摺りをとった順番通り、桜の作品から水曜日に本摺り開始。
 
ひとり暮らしだから、何時に起きても自由、ご飯の心配もなしの自由を得、
目が覚めるがままに6時頃起きだし、
前の晩に大量に作ったおでんを温め直し、いくつかほおばっていざ出陣。
 
午後1時過ぎには6枚の本摺りを完了し、
水張りといって和紙にしわが寄らないようにボードに貼り付けた。
 
しかし、そこでふと作品をまじまじ見て、思った。
『なんか水紋がごちゃごちゃしていて気に入らない・・・』
 
「ほら~、ほらほら、また始まったよ~。
これ本摺りだよ、今更そんなこといわないでよ」と心の中でもうひとりの私が叫ぶ。
 
が、しかし、一度気に入らないと感じてしまった気持ちはもう無しには出来ない。
この自由の身がそうさせたのか、版画家としての意地かわからないが
とにかく、もう一度この桜の方の作品の版を微調整して、
本摺りを今一度とることになった。
(なったっていうけど、あんたが決めたんじゃん・・・)
 
さあ、そこからがひとり暮らしの恐ろしいところ。
 
和紙は少なくとも湿してから5時間ぐらいは間を置かないと
水が均一に染みこまないので摺り出すことが出来ない。
 
午後2時、新たに6枚の和紙に湿しを施し、
もう一度絵の具の調合をし、刻を待った。
 
1作分の本摺りを終えているので、十分体は疲れていて、腰がミシミシする。
使った後の絵の具や絵筆も大量に汚れたままそこにある。

次に本摺りを始められるまでの時間にいろいろしなければならない。
 
夕方の変な時間にお風呂に入り、
まだ6時なのにまたおでんを温め直して、お刺身と共に夕食。
汚れたアトリエと道具類をきれいにしてリセット完了。
 
何ごともなかったかのように午後7時、2回目の桜の本摺り開始。
夜中の12時半、体力と気力の限界を感じ、引退、じゃなくて就寝。
 
本日木曜日、幸いにも雨。(版画の摺りに雨は恵みの雨)
 
朝の連ドラを見終わり、夕べの続き開始。
10時半ぐらいに完成した水紋はイメージどおりの出来具合。
昨日のことはなかったことにして、気持ちも新たにもみじの方に移ることが出来る。
 
ここでリセットの意味もあり、
8時前に朝食をとったばかりというのに、11時に昼ご飯。
またまたおでんの残りを温め直し、あんぱんとみかんもほおばり、お腹を満たす。
 
更に完全に体を騙すために、ちょっとお昼寝。
 
30分ほど横になり、気持ちだけは完全復活を遂げ、アトリエに。
 
ばれんを持つ手がちょっとしびれているが気にしない。
首から肩が凝りで盛りあがっているが無視。
水の使いすぎで指がガサガサ、ばれんだこが赤く腫れて痛いが勲章勲章。
 
こんな風に版画家は自らの羽根を1本1本抜いては美しい錦の布を織ったとさ。
 てなイメージ。
 
そして、遂に夕飯の前には無事、もみじの方の6枚も本摺りを終えた。
こちらは一発オーケーで
今できることはすべて成し遂げたという感じ。
 
さすがにおでんは食べ飽きたので、
本日の夕飯は
豚のしょうが焼き、ブロッコリーのごまマヨネーズがけ、
とうふと鱈と白菜の水炊き、わかめと揚げのおみそ汁、香の物。
 
ようやく人間らしい生活に戻るメドがつき、メデタシメデタシ。
体重も1キロ減で、メデタシメデタシなのでした。


0 件のコメント:

コメントを投稿