2014年4月16日水曜日

人の顔の不思議


 
個展の5日目の夜、個展会場で、カメラマンH氏による写真撮影が行われた。
撮ったものはオブジェの作品と作家のプロフィール写真である。
 
オブジェは椅子と脚立などであったが
背景の木目のパネルと共にあることで、作品として成り立っている。
しかし、いったんそれらも家に持ち帰ると、単なる椅子と脚立に成り下がってしまうので
是非とも会場に設置してある状態で作品として残したかったのである。
 
また、以前、キモノ姿でプロフィール写真をH氏に撮影してもらったことがあったが
きっちり撮れすぎていてモデルの私としては嬉しかったのだが
いざ、絵描きとしてプロフィール写真が必要だと言われた時
ちょっとそれを提出するのはためらわれる作品群だったのである。
 
そこで、実際の作品を前にして洋装で撮ってもらえば、
絵描きのプロフィールらしくなるのではと
再度お願いして撮ってもらったのが今回の写真ということになる。
 
そのオブジェ写真とプロフィール写真の原稿は1週間ほど前、自宅に届いていた。
 
しかし、フィルムとデジカメの両方で撮ったオブジェ作品の方は
デジカメの分がH氏の好意で濃い目のグレーの背景に加工されていた。
 
また、デジカメだけで撮ったプロフィール写真の方は
たぶんどれもすこし加工が施された状態で、インデックスと共に送られて来たのだが、
キモノの時の表情や顔つきに比べ、凛としているというか
ややきつい感じで、アーティストとしてのイメージメイクがなされていると感じた。
 
そこで、原稿を受け取ったお礼のメールを打つ際に
グレーの背景がすこしアーティフィシャルであるということと、
プロフィールが前回より四角い顔でややきつい印象だと書いて送ったところ、
そのお返事は何もないままに
1週間経った今日
背景が加工無しで白いままのオブジェ写真と
顔にすこしずついろいろな加工を施した9枚のプロフィール写真が送られてきた。
 
凝り性のH氏が私の送った感想を元に
訂正版を作ってくださったのだ。
 
白い壁のままのオブジェ写真はグレーの背景のものとは別に
十分美しく、このまま画集にでも何でも使えそうなので大助かり。
 
そして、9枚の顔の方は
自分の顔ながら、その変化が実に面白いものだった。
 
写真の加工は
タレントや女優のように、あるイメージに添っていじりまくるなどということはせずに、
極自然にすこしだけ加工してみましたと書いてある。
 
まず、何の加工もない、あの日撮ったそのままの私が0番。
滑らかな肌加工のみがなされたのが1番。
更に、二重アゴと首のしわをすこし消したのが2番。
更に、白目をより白くし、顔の輪郭をすこし細くしたのが3番。
・・・
そして、遂に滑らか肌も細顔もしわ取りもして、ついでに目をぱちくりさせたのが8番。
という具合である。
 
それぞれ1枚ずつしげしげ見て、行きつ戻りつしなければわからないほどなのに
確実に若返っていく不思議。
 
眉・鼻・口元・歯はまったくいじっていないというのに
印象が相当変わる。
 
大昔、芸大で『骨学』と『筋学』の講義を聴いて
その後にその時の自分から骨格や肉付き・しわなどを加えて10歳ごとに年をとらせ
老婆にするというレポートを書かされたことがあるが
その逆のような現象が目の前にあって、非常に興味深かった。
 
まあ、そうは言っても20歳にはとうてい見えないのだが
二重アゴと首のしわを薄くして、肌の滑らかさを手に入れ
顔がいくぶん細くなれば
「ちょっと、これ相当ヤバくない?!」という感じなのである。
 
もはや自分の顔であることなどどうでもよく、
人の顔の印象がこんなすこしのことで変化することの方が面白く
こうした実験をもっとやって欲しくて
H氏にまた何か機会があればプロフィールをよろしく!とお願いしてしまった。
 
H氏もモデルとしての私に面白みを感じているようで
次の機会をさぐっている様子である。
 
たぶん、写真家と絵描き
ものづくり同士の興味が一致したということだろう。
 
プロフィール撮影、それは
プロフィール写真が必要になるあてなど滅多なことでないくせに
別の好奇心がむくむく湧いてくるおもしろ体験なのだった。

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