2024年4月21日日曜日

作品タイトルが決まるまで

 


4月は入学式だの誕生会だので
何かと忙しくしているうちに
日々が過ぎていっている。

作品撮影の日に間に合わせようと
4月初めに小作品の試摺りと本摺りをしたが、
3点彫ってあった小作品のうち、
1点しか撮影に間に合わせることが
できなかった。

少し間が開いてしまったが、
今日、
何とか2点目の本摺りに漕ぎつけた。

この作品の試摺りは
一昨日の午後、とってあったので
昨日の午前中に絵具の調合を行い、
本摺り用の和紙を湿らせて、
スタンバイした。

今回の小作品は
雨シリーズの1点なのだが
珍しく雨のない紫陽花の花である。

1輪だけの紫陽花の花で
中央にこれから咲き出すつぼみが
ぎっしりついている状態だ。

紫陽花の花だと思っている部分は
実はがくが変化したものなので、
花は真ん中の小さいつぶつぶの部分。

この作品のモデルになった紫陽花は
赤紫を基調にしているが、
中央部分はつぼみの開き加減で
いろいろな色と表情を見せる。

それをデザイン化して
つぶつぶにいろいろな色を使って
遊んでみた。

本摺りは明るい色から摺っていくのが
セオリーなので、
今回は中央のカラフルな花のつぼみから
摺ることにした。

途中、
レモンイエロー、黄色黄緑、淡いブルー
白に淡いピンク、濃いピンクなど
ころころと可愛い玉っころが現れ、
自然と「さくまのドロップス」という
言葉が浮かんできた。

この作品のタイトルは
『ドロップス』か『ドロップ』かの
いずれかにしようと思いながら摺っていた。

しかし、摺りは後半になって
背景色や葉っぱの黒に差し掛かり、
終盤に中央の花の背景の深緑をおいたあたりで
何だかドロップとは違う感じになってきた。

終わってみれば、
『ドロップ』みたいな可愛い作品ではなく
もっと大人の雰囲気の作品に落ち着いた。

けっこう色っぽい感じにも見える。

「なんかドロップじゃないな」と眺めて、
結局、タイトルは
紫陽花の別名でもある
『七変化』にすることにした。

摺りの途中では可愛い女の子だと思ったが、
摺り進めるにつれ
女の子は成長し、少女へと変わり、
出来あがってみると
すっかり大人びた女性になっていた
という感じ。

紫陽花の花は
つぼみから開花するにつれ
薄黄緑色から淡い水色やピンク、
濃い青や赤紫などに変化する。

それを指して「七変化」という別名がある
のだと思うが、
期せずして、摺りが進むにつれ
作品イメージの七変化を体感した。

もちろん試摺りも本摺りも
ひとり画室に閉じこもって
黙々と作業をしているわけだが、
実は頭の中ではこんなことを考えながら、
作品と対話しつつ、
作品という子どもを産みだしているのである。

本日は
けっこう色っぽい女の子を
出産!!

五体満足
べっぴんさん!!









































2024年4月15日月曜日

古稀のお祝いディナー

 




























4月14日の夕刻、
恵比寿のジョエル・ロブションにて
私の古稀のお祝いをしてもらった。

「古稀」という言葉は
古代 稀にみる長生きでおめでたいという
意味だそうだが、
現在では100歳までのご長寿もいるほどだから
稀にみるということもない年齢だ。

しかし、実際にその歳になってみると
まったく実感が湧かないぐらい
数だけがここまで来てしまったという感じ.

ただ、寄る年波とはよく言ったもので、
ここ最近、無理が効かなくなってきたとか、
寝ても疲れが取れていないと感じる日もあり
徐々に年相応になってきたのかもしれない。
(今でも10歳はごまかして生きているのだが)


私は母親が59歳で亡くなっており、
父親も69歳で亡くなっているので、
その歳を越えたことには
万感の想いがある。

そんな気持ちを娘たちが察して、
ふたりで『古稀のお祝いの会』を
企画してくれた。

私が「着物を着ていけるようなレストランで
静かに食事がしたい」とリクエストしたので
孫たちは婿に面倒みてもらうことにし、
オリジナル・メンバーだけの
豪華ディナーをセッティングしてくれた。

場所は恵比寿ガーデンプレイスの中にある
シャトー・レストラン『ジョエル・ロブション』
内装は深い紫色が基調色だというので
モノトーンコーデの着物と帯で
行くことにした。

女子だけ3人が少し早めに集合して
建物の前でひとしきり写真撮影会をし、
予約の5時半にレストランの
門をくぐった。

クローク脇の階段のところのお花も
豪華だったけど、
レストラン内正面には
深い紫色の空間に浮かび上がるように
妖しくも美しいお花が活けられていた。
私達のテーブルはそのお花のすぐ下の
レストラン中央のお席だった。

そこからはフレンチの正式なコースの
始まり始まり。
担当のソムリエがまずは
ワインリストを持ってやってきた。

このレストランはフィックスのメニューなので
席にはメニューリストが置かれている。

スターターのレモンとバニラのジュレには
アニスが香り、お食事のスタートとして
食欲を刺激する。
フランス産ホワイトアスパラガスのポシェは
お皿の上に可愛い庭園が広がり、
蛤のグラチネはエスカルゴのような仕立てで
フランスと日本のマリアージュだ。

飲み物はシャンパンに始まり、
お料理に合わせてワインも白から
赤へと進み、
ソムリエがワインリストを指さし
説明してくれるのに合わせ
ダンナがうんちくを披露している。

娘たちもしっかりおしゃれして
この会に臨んでいるので
なかなか絵になる4人組になっているのでは。

このコース、
意外や和の素材もふんだんに使われており、
穴子やホタルイカ、
こごみや筍、タラの芽といった食材が
見事にフレンチとして調理され、
いずれもとても美味だった。

メインは和牛フィレ肉のグリエだったが、
フィレ肉は柔らかくて旨味が強く、、
「美味しくて言葉が出ないわね」と
娘がいう言葉が最大級の誉め言葉だと思った。

2種類のデザートの前に
お祝いのプレートが運ばれてきた。
あまおうのケーキにろうそくが1本刺され
プレートには
チョコでメッセージが書かれている。
周囲を真っ赤な薔薇の花びらで囲み
艶やかなバースデー・プレートだ。

そのタイミングでお店側が記念写真を
撮ってくれ、
それがすぐにプリントされて
席に4枚のカードになって配られた。

あまおうのナージュと
マンダリンオレンジのムースも
美味しいだけでなく可愛いし美しく
パティシエの腕の見せどころ。

ついついすでにお腹はいっぱいなのに
最後のひとさじまでいただいてしまった。

5時半に始まったディナーは
終わってみれば9時を回っており、
こうして古稀になっても
まだまだたくさんいただけることを証明した。

明日からは食事の量を少し減らして
運動を心掛けつつ、
健康に留意して頑張ろうと思った。

昨日は初夏を思わせる晴天にも恵まれ、
優雅で豪華な古稀の誕生会だった。



































2024年4月12日金曜日

年に一度の作品撮影

 









今日は年に一度の
作品撮影が行われた。

フォトグラファーのHさんは
約束の日になると
埼玉県から車に機材を積んで
駆けつけてくれる。

Hさんは
今月末に大きな仕事を抱えているらしく
(神奈川のとある美術館所有の魯山人の器
120個以上の撮影を任されているとか)
空いている日が限られていて
偶然、私の誕生日に撮影日が決まり、
しきりに恐縮してくれた。

しかし、
現実はダンナもゴルフでいないし、
取り立てて豪華なご飯を作るでもないので
撮影が入ってちょうどいいくらいのものだ。

それでもFacebookつながりの友人たちが
次から次へとタイムラインに
メッセージを送ってくれ、
賑やかな午前中だった。

例年通り、午後の1時にHさんはやってきて
いつもの通りに車から機材を下ろし、
和室で組み立ててスタジオ仕様にする。

私の役目は撮影助手だが、
許可を得て、
撮影中の写真も撮らせてもらう。
Hさんは
「顔が出ても構いませんよ」と言ってくれる。

私が大きな作品から順番に手渡しし、
Hさんが作品に傷がつかないよう
細長く丸めたテープを四隅に貼り
パネルに止めていく。

毎年思うが、神経を使った
丁寧な作業は所作が美しく、
信頼感がもてる。

1時間半ほどで一連の作業が終われば、
Hさんが機材の撤収を行っている間に
私はお茶の準備をし、
おしゃべりしながら楽しいひとときを
過ごす。

今年は陶芸の展示会が迫っていて
カップボードにしまいきれない新作の器が
リビングのテーブルの上にゴロゴロしてたので、
いきおい陶芸に関する話題になった。

お茶とお菓子も陶芸作品の器で出したので
お茶を飲みつつ
湯飲みをを眺めたり、
クッキー皿をひっくり返したり。

木版の作品とはまた違う持ち味の
陶芸作品だと思われたらしく、
Hさんはいくつか手に取って
「こういう作業、楽しそうですね~」と
自由奔放な私の陶芸作品を見てそう言った。

1年分の版画作品を出してきて
写真撮影すると
自分でも1点ずつしか創っていないので、
新鮮な感じがするし、
2年分の陶芸作品を並べてみると
それはそれで版画作品とは違う塊になる。

自分でも版画家としての自分の色に気づけるし
陶芸家(というほどでもないが)としての
自分の色も解る。

ひとつの区切りとして、
年に一度の作品撮影は
意味があると感じた。